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「なれのはて」

加藤さんの最新作「なれのはて」読み終わった。

narenohate.kodansha.co.jp

大きなネタバレはしないつもりですが、いちミリも情報を入れたくない人はこの先を読まないでください。

 

私が事前に心配していた戦争がテーマという点は、小説現代のインタビューでその葛藤を思ったよりきちんと答えていたので安心した。

物語は主に謎の絵を追うミステリーが軸、前半はそこにメディアや政治が絡んできて、ずっと頭の中で『「エルピス」だ!』と思いながら読んでいた。確か、加藤さんフジテレビのスタジオで佐野亜裕美さんと挨拶する機会があったって言ってたよな。「なれのはて」の構想は「エルピス」放送よりずっと前から思いついて書いていたと思うけど、放送時はどう思ってたんだろう。「なれのはて」もいつかドラマあるいは映画になったりするかな?

そして、中盤である一節にやられてしまい、泣いてしまった。今、この時というのもあるけど。その一文はずるいよ、小笠原さん。あと全然関係ないけど、途中でクラフトジンが出てきて『クラフトジン!』って叫んでしまった…(笑)。あと画材の話とか。加藤さんの小説は加藤さんがラジオとかインタビューで話してた事柄が出てくるからおもしろいよね。他の作家ではなかなか無い体験。と思っていたらタイムリーに「山崎伶奈の誰かに話したかったこと。」で同じような主旨のことを話していたので『おっ!』となった。

後半は怒涛の勢いで謎が紐解かれていく展開だった。「チュベローズで待ってる」のようなビックリ超展開があったり、「閃光スクランブル」のような格闘シーンがあったり(以前から思っていたけど加藤さんの描写する格闘シーンって情景がありありと浮かぶし他に類をみないほど秀逸だと思う)、過去作の傾向も残しつつ、ある家族とその周辺を巻き込んだ壮大なスペクタクル歴史超大作という、今までにない登場人物像や物語の幅を感じさせる何歩も飛躍した素晴らしい作品だった。そして、最後に再び出てきた小笠原さんの言葉。やっぱり、それが言いたかったんだよね。と同時にまた涙してしまった。そしてそして、見事なラストシーン。ここでまた号泣してしまったよ。こんな美しいラストシーンがあるかよ!スタンディングオベーションだよ。

加藤さんは「なれのはて」を発表することにビビっていると言っていた。読了した後、そう口にした気持ちも分からないではない。でも、ちゃんと歴史・背景を綴った物語を読めば、そしてそれを受け止める感受性があれば誰も糾弾はしないはず。いつだって声を荒げるのは自分が上の立場だと勘違いした愚かで浅はかな人間だけ。加藤さんは『刺されるかも』とも冗談めかして言っていたけど、結局作品を世に出した加藤さんは人間をとても信じてる人なんだなと改めて思わされた。美しいラストシーンもこの世界を信じている人だからこそ書けたんだろうな。

前半はずっと「エルピス」が頭に浮かんでいたけれど、後半はずっとNEWSの「NEW STORY」が浮かんでいた。加藤さんは、NEWSじゃなかったら作家にはなっていないと常々言っているけれど、「なれのはて」はNEWSという人生を歩んできたからこそ書けた傑作では?とも思った。すごい作品だし、より多くの人に読まれ受け入れられる作品になって欲しいなと思う。

 

<追記:素敵なPV>

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